2026.08.31
2026.08.31
工場の自動化とは|工程別に使える設備と進め方

「そろそろウチの工場も、本格的に自動化を考えないとまずいんじゃないか」
経営陣や上司からそう振られたとき、多くの生産技術や製造現場のご担当者が最初に突き当たるのは、「で、結局ウチはどの工程から手をつければいいんだ?」という疑問ではないでしょうか。
世の中にはロボットや最先端マシンの導入事例、華々しいカタログがあふれています。
でも、それらをいくら眺めていても「自社の現場の、どこに当てはめれば一番効くのか」までは教えてくれませんよね。
展示会で見たような立派なロボットを思い切って導入したものの、前後の工程にモノが溜まるだけで期待したほど生産性が上がらなかった……なんて失敗談も現場あるあるです。
自動化で本当に成果を出すためにまずやるべきなのは、機械のカタログを開くことではありません。
「工場全体のモノの流れを、いま一番せき止めているボトルネックはどこか」を現場の目線で突き止めることです。
この記事では、省力化投資を支援する国の製品カテゴリや政府統計(2026年8月時点の公開資料)を手がかりにしながら、工程ごとに本当に使える設備と、迷わない着手順の決め方を整理しました。
製造業の工場を前提に、現場で汗を流す担当者の目線に立って実践的なステップを解説していきます。
この記事でわかること
- 公的な製品分類から読み解く自動化設備の全体像
- 工程別に見た「どこに何の設備が効くのか」の対応
- 「次に手を付ける1つ」と「今回はやらない1つ」の具体的な決め方
工場の自動化とは
工場の自動化(ファクトリーオートメーション、FA)とは、これまで現場の作業員が手作業や経験で行ってきた作業を、機械や仕組みへ置き換えていく取り組み全般のことです。
決して「最新鋭のピカピカなロボットをラインにズラリと並べること」だけが自動化ではありません。
材料を切削・加工したり組み立てたりする主工程はもちろん、製品の仕上がりをチェックする検査や、工程と工程の間で台車を押してモノを運ぶ作業の効率化も、すべて立派な自動化の一部です。
さらに言えば、置き換えるのは機械の物理的な動きだけに限りません。
現場の作業手順を整理したり、毎日の出来高や不良数の数え方を変えたりといった「運用の仕組み」を見直すこともここに含まれます。
「現場の人が頭で迷って手作業でカバーしている場面を、工場全体から一つずつ減らしていく活動」と捉えていただくと、肩の力を抜いて全体像をつかみやすくなります。
製造業で自動化が進んでいる理由
いま多くの現場で自動化が叫ばれている一番の理由は、言うまでもなく現場の「人手不足」が限界に近づいているからです。
求人を出してもなかなか人が集まらず、現場の負担は増える一方ですよね。
公的なデータを見ても、その厳しさは浮き彫りになっています。
総務省統計局の労働力調査(2025年平均・2026年1月30日公表)(2026年8月19日確認)によれば、製造業で働く人の数は1,033万人となり、前年から13万人も減少しました。
もちろん、これは日本全国をならした数字です。
自社の足元を見つめ直すなら、まずは各工程に何人の作業員が張り付いているのかを書き出してみることから始めましょう。
ベテラン作業員の定年退職の時期や、これからの採用見込みを工程ごとに並べておくと、あとで「どこから優先して手を付けるか」を決める強力な裏付けになります。
ただ、ここで一つだけ焦らないでほしいポイントがあります。
「人が足りないから、とにかく何か機械を入れよう!」と慌てて動くと、結局「いま予算内で買えそうな機械」に現場のやり方を無理やり合わせるハメになりがちです。
まず見るべきは、「どの工程の人手不足が、工場全体の足を一番引っ張っているのか」という点です。
そこを突き止めてから、投資の順番を組み立てていきましょう。
では、具体的にどんな設備が現場の置き換えを担ってくれるのか、全体像を整理していきます。
工場の自動化に使われる主な設備
自動化設備を選ぶときは、国の省力化支援制度が公開している「製品カテゴリ」をベースに全体像を俯瞰してみると、どこまでが自動化の範囲なのかをフラットに整理できます。
公的な資料に載っているのはカテゴリ名と対象業務までですので、そこから先、自社のどの工程で使うかは現場の実態に合わせて当社で当てはめてみました。
あらかじめ判断基準を持っておくと、自社の現場に引き寄せて考えるときに迷いません。
国の分類にある自動化の設備
工場の自動化に使える設備は、人手をかけずにこれまでと同じ生産量を維持・向上させる「省力化投資」を支援する国の補助事業でも、公式な製品カテゴリとして整理されています。
中小企業基盤整備機構が公開する「中小企業省力化投資補助事業 製品カテゴリ」(公式サイト上の更新日:2026年8月6日、確認日:2026年8月19日)を見ると、物流システム機器の代表的なカテゴリの一つとして「垂直搬送機(貨物専用)」が挙げられています。
対象業種には「製造業」が含まれ、対象業務領域としても「資材調達」「加工・生産」「入出庫」がはっきりと明記されています。
これら工場でよく使われる設備について、当社で現場での「役割」ごとに大きく5つに分類してみました。
- つくる:産業用ロボット、協働ロボット
- 調べる:AI外観検査、画像検査、IoTによる可視化
- 運ぶ:無人搬送車(AGV・AMR)、無人フォークリフト(AGF)、コンベヤ、垂直搬送機(貨物専用)
- 納める:パレタイズロボット、検品仕分システム
- 保管する:自動倉庫、ラックシステム、デジタルピッキングシステム
この5つの役割に上下関係や優劣はありません。
現場によって「どこで作業が滞っているか」が違う以上、検討すべき設備もそれぞれ変わって当然だからです。
なお、こうした支援制度の上手な調べ方については、記事の後半で詳しく触れます。
ロボット以外の自動化の方法
「自動化」と聞くと、ついアーム型の産業用ロボットを思い浮かべてしまいがちですが、現場の選択肢はそれだけではありません。
加工や組立を自動化する機械と同じくらい、検査や搬送、保管の手間を減らす設備も同じ土俵に並びます。
先ほど触れた公的資料でも、「垂直搬送機(貨物専用)」の対象業務領域に「加工・生産」が含まれていました。
これは、モノを削ったり組み立てたりする加工設備だけでなく、「工程と工程の間でモノを運ぶ仕組み」を自動化することも、立派な製造現場の省力化として認められている証拠です。
もちろん、ロボットに意味がないという話ではありません。
加工や組立の工程が工場全体の一番のボトルネックになっているなら、迷わずそこから手をつけるべきです。
どの工程にどんな設備が対応するのか、まずは対応表で全体像を確かめてみてください。
加工から出荷まで工程別の設備一覧
自動化設備の一覧は、自社の「工程の流れ」に置き直して初めて現場で使える道具になります。
以下の表では、工場の工程を5つに分け、それぞれの現場でよく見られる「詰まりの例」と、そこで主に使われる設備を当社で対応させました。
| 工程 | その工程で確認する詰まりの例 | 主に使われる設備 |
|---|---|---|
| 加工・組立 | 加工待ち、段取り替えの時間 | 産業用ロボット、協働ロボット |
| 検査 | 検査待ち、人による判定のばらつき | AI外観検査、画像検査、IoTによる可視化 |
| 搬送・物流(工程間の移動) | 仕掛品の滞留、工程間の運搬に人が張り付く | 無人搬送車(AGV・AMR)、無人フォークリフト(AGF)、コンベヤ、垂直搬送機(貨物専用) |
| 梱包・出荷 | 梱包待ち、人手による積み付け | パレタイズロボット、検品仕分システム |
| 保管 | 置き場の不足、取り出しに時間がかかる | 自動倉庫、ラックシステム、デジタルピッキングシステム |
※出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 製品カテゴリ」(公式サイト上の更新日:2026年8月6日、2026年8月19日確認)。「垂直搬送機(貨物専用)」のカテゴリ名・対象業種・対象業務領域は同資料を参照。工程区分、詰まりの例、対応設備は本記事独自の整理。
工程と工程の間をつなぐ搬送設備は種類がとても多く、選び方によって使い勝手が大きく分かれる部分です。
種類ごとの特徴や失敗しない選び方については、工場内の搬送機の種類と選び方の記事で詳しく整理しています。
自社の工程への当てはめ方
この表を使うときは、見る順番にちょっとしたコツがあります。
右側の「設備」から選ぶのではなく、必ず真ん中の「詰まりの例」から探してください。
「そういえば、うちの工場もいつもここで仕掛品が山積みになっているな……」という現場の痛い場所を先に見つけると、検討すべき設備は自然と絞り込まれます。
設備選びは、常に「工程の課題」とセットで考えなければなりません。
解決したい工程が決まって初めて、求められる処理スピードやワークの重量、設置スペースに合う仕様が見えてきます。
同じ産業用ロボットを導入するにしても、その工程が工場全体の足かせ(ボトルネック)になっているかどうかで、確認すべきポイントはまったく違ってくるのです。
なお、保管や出荷の先にある外部倉庫や配送網の効率化は、工場内のライン設計とは考え方の次元が異なります。
この記事ではあくまで「工場の中の工程」に絞り、その先までは踏み込みません。
とはいえ、一覧表を眺めているだけでは「じゃあ、どの行から順番に手をつけるのか」までは決まりませんよね。
次に、着手する順番の決め方と、「今回はあえて見送る」と判断するための条件を見ていきましょう。
自動化する工程としない工程の選び方
最初に手をつける工程は、設備の目新しさや流行りで選ぶのではなく、「必要な生産量に対して処理能力が追いついていない工程はどこか」という基準で選びます。
そして、条件が揃っていない工程は「今回はあえて見送る」と割り切ることも、同じくらい重要な決断になります。
詰まりの見つけ方から見送る条件まで、順を追って見ていきましょう。
生産量と処理能力を比べてボトルネックを見つける手順
最初に行うのは、必要な生産量に対して処理能力が追いついていない工程を「ボトルネック候補」として仮決めすることです。
いきなり完璧な答えを出そうとせず、まずは詳しく測定するターゲットを絞るための下準備だと考えてください。
- 対象をそろえる。
あれもこれもと欲張らず、まずは1つの主力製品群に絞り、同じ工程経路を通る品を対象にします。
もし複数の製品群で同じ設備を共有しているなら、ほかの製品群がその設備を使っている時間もしっかり分けて記録しておきます。 - 同じ期間・単位で比べる。
必要生産量と、現場データから見積もった処理能力を「同じ期間の生産個数」で比べるか、タクトタイム(目標時間)とサイクルタイム(実績時間)を「時間」でそろえて比較します。
このとき、機械の故障や段取り替え、チョコ停といった「設備側の停止」と、上流から材料が流れてこなくて作業員の手が止まっている「手待ち時間」は、必ず別の項目として記録してください。 - 待ちの理由を分けて確かめる。
仕掛品が山積みになっている光景を見ただけで、そこが原因だと決めつけてはいけません。
「加工を待つ品が並んでいるのか」「設備自体は空いているのに材料が届かないのか」「段取り替えで止まっているのか」など、手が止まっている本当の理由を記録し、必要量と処理能力の差、前後工程の状態を合わせて候補を絞り込んでいきます。
前後の工程を比べるときは、設備の並列台数や段取り替えの条件も一緒にメモしておきましょう。
候補を1つ置いたあとも、現場の実績値と待ちの理由を追加で丁寧に確かめていってください。
搬送設備を検討するときの確認ポイント
カタログを開く前に、まずは「必要な生産量に届いていない工程」を1つ仮決めします。
必要生産量と処理能力、前後工程の待ちの理由を並べてから設備候補を比べると、課題からブレずに検討を進められます。
設備を入れる前に見直す工程配置と段取り替え
高い機械に頼る前に、まずは現場のモノと情報の流れそのものを直せないか探ってみてください。
これがいわゆる「業務プロセスの見直し」です。設備を入れる前の今の流れをきちんと記録しておけば、導入後の効果を検証するときにもそのまま役立ちます。
見直す対象は主に4つあります。
どの設備をどの順に並べるか(工程配置)、どの順序で加工するか、どこで検査するか、そして品種を切り替えるときの段取り替えにどれだけ時間がかかっているかです。
ラインの並べ替えや段取り時間の短縮を試したときは、改善前後の「仕掛品の数」と「段取り時間」を必ずメモに残しておいてください。
こうしておけば、設備を入れたあとの成果と、現場の改善工夫による効果を切り分けて測れるようになります。
費用と効果で決める着手の順番
着手する順番は、見積書の金額だけで決めるのではなく、次の3つの視点で見比べます。
- 工場全体の生産スピードを決めている「ボトルネック工程」になっているか
- 導入後、サイクルタイムや仕掛品数、段取り時間がどう変わるかを数字で説明できるか
- 現場のスペースや電源など、物理的な条件として今すぐ着手できる状態か
最初から工場全体を覆うような大がかりな設備から始める必要はありません。
まずは1つの製品群、1つのラインという小さな範囲から着実に確かめていくのが成功の秘訣です。
なお、自動化の度合いを「レベル〇」と段階分けする整理もよく見かけます。
この記事では共通の単一区分は採用せず、「人の手がどれくらい介在するか」と「止まったときに人が張り付く必要があるか」の2点で段階を分けました。
そのほうが、現場での運用のイメージがずっと湧きやすいからです。
ここまでは「どこからやるか」の選び方を見てきました。
次は逆に、「今回はあえて後回しにする」と判断する条件を見ていきましょう。
今回は自動化しないほうがよい場合
すべての工程を急いで自動化する必要はありません。
次の4つのいずれかに当てはまる工程は、順番が後回しになりやすくなります。
「今回はやらない」と判断することも、重要な優先順位づけの一部です。
工程設計の見直しが先になる場合
ラインの並び方や仕掛品の置き場にそもそも無理があるなら、機械を入れる前に工程配置の見直しを行うのが先決です。
いまの配置を記録しておき、レイアウトを直したあとで自動化の順番を組み直しましょう。
需要変動が大きい場合
作るモノの種類や量が頻繁に変わる工程では、品種や生産量の変更にどこまで柔軟に対応できるかが設備ごとに違います。
自社の変動幅に対応できる見通しが立つまでは、慎重に順番を待つのが無難です。
運用と保全の担い手が決まっていない場合
設備がエラーで止まったとき、誰が直しに行くのか。
トラブル発生時の復旧手順が決まっていないなら、着手の順番は後ろに置きましょう。
トラブルに対応できる担い手の分け方については、記事の後半で詳しく扱います。
効果を数字で説明しにくい場合
たまにしかモノを運ばず、今の人数で十分に足りている工程は、「サイクルタイムがこれだけ縮んだ」と数字で示しにくいものです。
社内での説明が難しい場合は、ほかの候補工程と着手順位を比べましょう。
ただ、個別の加工工程ばかりを見つめていると、現場に潜む思わぬ「詰まり」を見落としてしまうことがあります。
工程のあいだと階をまたぐ運搬に残る人手
工程の中をどんなに最新の機械に置き換えても、隣の工程へ運ぶ作業やその間の待ち時間が制約として残ってしまう場合があります。
ここが多くの現場で見落とされがちなポイントです。
工程の中の処理速度と、工程と工程の「すき間」に残る運びの手間は、必ず分けて記録してみてください。
加工と検査のあいだに残る仕掛品と運搬
工場の中でモノが動いている区間は、まとめて「構内物流(工場内物流)」と呼ばれます。
加工と検査のあいだ、そして検査と梱包のあいだで、台車やパレットに積まれた仕掛品が置き去りになっていないでしょうか。
そして、その移動を作業員が手押しで担っていないかも、あわせて見ておきたいところです。
現場の工程表もチェックしてみてください。
工程と工程のあいだの待ち時間がそこに書き込まれているかを確認し、もし抜けているなら区間ごとの待ち時間を別に記録して、受注から出荷までのトータル時間と照らし合わせてみましょう。
工程間を確認するときのポイント
工程間の搬送や待ちが制約になっているなら、工程内の自動化だけでなく、その区間も測定対象に含めましょう。
区間ごとの運搬回数、仕掛品数、待ち時間を数字で残しておいてください。
同じ階の移動と階をまたぐ移動の違い
自社工場の運搬を見直すときは、「同じ階の中で完結する区間」と「階をまたぐ区間」をきっちり切り分けます。
ひとまとめにしてしまうと、それぞれの課題が見えなくなってしまうからです。
区間ごとに、運ぶ物の重量とサイズ、1日の往復回数、いま誰がどうやって運んでいるのかを書き出して同じ形式で並べてみてください。
同じ運びに見えていた区間でも、往復の回数と重量に大きな差があると気づけるはずです。
とくに複数階に工程が分かれている建屋では、階をまたぐ移動が工程と工程のあいだに大きく挟まります。
いま上下の移動をどの手段で行っているのか、その区間が工程表に書き出されているかを確かめてみてください。
階をまたぐ運搬に設備を入れる場合と見送る場合
判断の分かれ目は2つあります。「往復の回数」と「そこで生まれている待ち時間」です。
1日に何度も上の階へ行き来していて、そのたびに前後の工程が待たされているなら、専用の昇降設備を検討する余地は十分にあります。
階をまたいで荷物を運ぶ設備は、中小企業省力化投資補助事業の製品カテゴリ(2026年8月19日確認)では「垂直搬送機(貨物専用)」として整理されています。
対象業務領域に加工・生産が含まれており、倉庫だけのための設備として置かれているわけではありません。
詳しい仕組みと特徴は、垂直搬送機の仕組みと特徴の記事で扱っています。
| 順番が先になりやすい条件 | 順番が後になりやすい条件 |
|---|---|
| 建屋が複数階にまたがり、加工と検査と梱包が別の階に分かれている | 平屋や単層で、階をまたぐ移動が発生しない |
| 人が台車で上下階を往復している区間がある | 全体の流れを決めている工程が加工や検査にある |
| その往復が工程と工程のあいだの待ち時間を生んでいる | 工場内の運搬の頻度も量も少なく、人手で足りている |
| 設置スペースや躯体の条件が現地調査で成立しない |
※可否は設置スペースや躯体の条件により、現場ごとの判断になります。
階をまたぐ運搬を比べるときのポイント
表の右側に1つ当てはまったからといって、即座に対象外になるわけではありません。
往復回数や待ち時間、設置条件を合わせて見て、他の候補工程と着手順位を比べてみてください。
順番が決まったら、次は「何が期待できて、どんな課題が出てくるのか」を整理しておきましょう。
工場の自動化のメリットと課題
工場を自動化して期待できるのは、主に「人手依存の低減」「品質の安定」「時間の短縮」の3つです。
ただし、どの工程を選ぶかで効果の出方は大きく変わりますし、初期費用、保全の体制、使い続ける人の確保といった現場の課題も同じタイミングで必ず出てきます。
稟議書を書くときは、期待できる成果と想定される課題を必ず並べて書くようにしましょう。
片方だけの都合の良い説明では、決裁者も判断のしようがありません。
自動化で得られるもの
期待できる3つの効果について、導入の前後で次のような具体的な数字を追いかけましょう。
- 人手依存の低減
人がつきっきりだった作業を機械に移した分の作業時間を測ります。 - 品質の安定
機械は同じ動作を同じ条件で繰り返せるので、判定や仕上がりのばらつきが前後でどう変わったかを見比べます。 - リードタイムの短縮
その工程が工場全体の足かせなら、受注から出荷までのトータル時間を測ってください。
どれも、対象にした工程が全体の流れを決めているかどうかで結果が変わるはずです。
測りはじめる前に、改めてその工程がボトルネック候補かどうかを確かめておいてください。
導入時に出てくる課題
一方で、導入を進めると次のような現場のハードルが見えてくるでしょう。
- 初期費用
設備そのものだけでなく、周辺の安全柵の設置やレイアウト変更、電源の引き込み工事など、環境を整える付帯費用も忘れずに計算に入れます。 - 保全とトラブル対応
万が一機械が止まったときに「誰がどこまで対応するのか」を決めておきます。 - 運用する人
日々の操作や始業前点検を責任を持って担う担当者が必要です。 - 設置スペース
設備の設置場所だけでなく、周囲の通路幅や天井の高さ、床の耐荷重といった建物の条件で置ける場所が変わります。
課題が計画の初期段階で見えているうちは、まだ順番を組み替える余裕があります。
着手する工程を決める段階で、課題も一緒に並べておきましょう。
決めた1つの工程をどう現場へ定着させていくか、具体的な進め方を見ていきます。
小さく始めて定着させるまでの進め方
自動化を現場に定着させる進め方は、「範囲を絞って試す」「効果を数字で示す」「担う人を決める」の3ステップで組み立てます。
最初から対象範囲を広げすぎると、どこでつまずいたのか原因を切り分けにくくなるからです。
基本はこの順番を守るだけで十分です。
1つの製品群とラインから試す
最初の範囲は、周りが驚くほど狭くてかまいません。
「この主力製品群だけ」「この1ラインの、この1工程だけ」から小さく始めてみてください。
ここで見るべきは、「機械が立派に動いたか」ではありません。
「対象工程の前後で、仕掛品の山と待ち時間が本当に減ったのか」という現場の事実のほうです。
狭い範囲で確実にノウハウを蓄積しておけば、ほかのラインへ横展開するときの強力な判断材料になります。
効果の測り方と社内での合意のとり方
効果は、仕掛品の数、サイクルタイム、段取り時間、再加工の件数、検査待ち時間の5つを数字で出します。
「現場がなんとなく楽になりました」という感想だけでは、次の投資に向けた決裁の判断材料になりません。
報告するときは設備にかかった金額だけでなく、どの工程の時間がどれだけ短縮されたのかもセットで出せるようにします。
そのためにも、機械を入れる前の「今のリアルな数字」を同じ測定条件でしっかり記録しておいてください。
なお、階をまたぐ搬送が候補に挙がっているなら、方式ごとに変わる垂直搬送機の費用の考え方にも、先に目を通しておくと安心です。
生産技術と製造と保全の役割分担
導入後に機械を毎日使い続けるのは、現場の人たちです。
設備を発注する前に、誰がどの役割を担うのかを決めておきましょう。
主な役割は次の3つです。
- 生産技術:どの工程を自動化するかを選び、導入後の工程配置やサイクルタイムの再設計を担います。
- 製造部門(ライン責任者):日々の運用や、段取り替え・品種切り替えのときの手順を担当します。
- 保全部門:機械が止まったときの一次対応と、定期点検の頻度を決める役割です。
スケジュールの線を引くのは、「誰がやるか」が決まってからです。
宙に浮いた役割が残っているなら、導入日程を決めるより先にそれを書き出してください。
導入前に確認する支援制度と現場条件
中小企業向けには省力化投資を支援する制度がありますが、対象や要件は改定されるため、最新の内容は必ず国の公式サイトと公募要領で直接確認してください。
現場側で事前に洗い出しておくべき項目は、運ぶ物の重量、通路幅、段差、人と設備が通る動線、そして設備が停止したときの非常時オペレーションです。
これらは図面上の確認だけでは判断がつきません。
設備の候補が絞れた段階で現地の条件と突き合わせ、図面との差分をメジャーを持って記録しておきましょう。
工場の自動化についてよくある質問
最後に、現場のご担当者からよく聞かれる2つの質問にお答えします。
費用の考え方と、倉庫や物流側の扱いについてです。
どちらも金額や個別の製品ではなく、判断の順番に関わる話になります。
工場の自動化にかかる費用の考え方
「工場の自動化って、大体いくらくらいかかるの?」とよく聞かれます。
ただ、同じ「自動化」と言っても数十万円の治具改善から数千万円規模の自動搬送ラインまで幅が広すぎるため、相場を先に置いても判断材料になりません。
金額を動かすのは、自動化の手段、対象とする工程、運ぶ物の重量とサイズ、必要な処理量、設置スペースや電源といった現場の条件、そして運用と保守の体制という組み合わせだからです。
まずは「この1工程だけ」と的を絞ってはじめて、ブレのない見積りの条件をそろえられます。
倉庫や物流側の効率化の進め方
工場の中の工程と、完成品の保管や出荷、配送の効率化とでは設計の軸が根本から変わります。
工場側は「工程の流れ」で分解するのに対して、倉庫側は「保管と出荷の機能」で分解するからです。
倉庫や物流側の進め方で迷っている方は、倉庫・物流側の効率化の記事もあわせてご覧ください。
まとめと次にやること
工場の自動化は、カタログをめくって「どの機械を買うか」を選ぶ作業ではありません。
自社の工程を丁寧に分解して、「どこが全体の流れを決めているか」を見つけるところから始まります。
手を打つときは、加工や組立だけでなく、加工と検査のあいだに残る仕掛品や、階をまたぐ移動が制約になっていないかも忘れずに確かめてください。
この記事を読み終えたら、まずは現場で次の2つを決めることから動き出してみましょう。
- 次に手を付ける1つの工程
- 今回はやらない1つの工程
前半で紹介した見つけ方に沿えば、まずは主力となる1つの製品群からでもすぐに現状を確かめられます。
現場を確認した結果、階をまたぐ動線がネックとして候補に残った場合は、垂直搬送機「タントレー」を製造している当社で、現地調査・見積り・図面作成を無料で承っています。お気軽にご相談ください。