2026.08.31
2026.08.31
倉庫の自動化の進め方|庫内9工程から着手する工程の決め方

「現場の人手不足も限界だし、ウチの倉庫もそろそろ自動化を進めないといけないな……」
そう思い立って展示会に足を運んだり、メーカーのカタログを取り寄せてみたりしたものの、「AGVに自動倉庫、ピッキングロボット……いろいろ載っているけれど、結局ウチの倉庫はどの工程から手をつければいいんだ?」と頭を抱えてしまっていませんか。
設備の一覧をいくら眺めていても、「自社のどの工程が出荷の足を引っ張っているのか」までは見えてきませんよね。
とりあえず話題の自動搬送機を走らせてみたものの、結局その先の仕分けや梱包で荷物が詰まってしまい、全体の出荷スピードは全然上がらなかった……なんて失敗談も現場ではよく耳にします。
倉庫の自動化で失敗しないためにまずやるべきなのは、機械を選ぶことではありません。
経済産業省の委託調査などの公的な資料で庫内工程と導入条件を確かめたうえで、必要処理量と継続処理能力を比べ、制約工程の候補を仮決めするところまで進みます。
この記事では、倉庫の中の工程に絞って、現場で迷わない着手順の決め方をわかりやすく整理しました。
輸配送の効率化は話の筋が変わるので、別の記事にまとめています。
なお、参照している制度や統計は2026年8月時点のものです。
この記事でわかること
- 自社のボトルネック工程の候補を仮決めする手順
- 庫内9工程ごとの自動化の手段
- 設備を選ぶ前に確認する建物の条件
倉庫の自動化とは
倉庫の自動化とは、トラックから荷物を受け入れてから出荷するまでの「庫内の9つの工程」を、機械や情報システムへ置き換えていく取り組みのことです。
「何億円もかけて倉庫全体を一気に無人化する」といった大がかりな話ばかりを想像する必要はありません。
「いま一番詰まっている工程から、一つずつ着実に仕組みを変えていく積み重ね」だと捉えていただくと、どこから手を付けるべきかの順番がぐっと見えやすくなります。
庫内作業の9つの工程
経済産業省の委託調査(2025年3月)では、倉庫の中の作業を工程ごとに細かく分けて集計しています。
荷物が入ってきてからトラックに乗って出ていくまでの一連の流れを、まずは次の9つの工程に区切って捉えてみましょう。
- 積み下ろし
- 入荷検品
- 搬送
- 棚入れ・保管・棚出し
- ピッキング
- 仕分け
- 梱包
- 出荷検品
- 積み込み
これら現場の物理的な作業に加えて、在庫数や作業の実績データを司る「情報(計画・制御)」の領域が存在します。
「なんとなく現場が忙しい」で終わらせず、まずはこの9つの工程をものさしにして、「荷物がどこから入ってきて、どの工程で処理しきれずに溜まっているのか」を数える単位にしていきます。
出典:経済産業省「令和6年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(中堅・中小企業の物流施設自動化のための課題整理・分析)調査報告書」
倉庫の自動化が求められている背景
いま倉庫の自動化が強く求められている背景には、現場の深刻な人手不足に加えて、法制度の大きな変化があります。
2026年4月に施行された改正物流効率化法の第2段階では、一定規模以上の倉庫業者(特定倉庫業者)に対して、中長期計画の作成や定期報告が求められるようになりました。
トラックの荷待ち時間・荷役等時間の計測結果は、入出荷周辺の改善状況を把握する材料になります。
ただし、庫内9工程の必要処理量・継続処理能力とは別の指標です。
さらに、国土交通省の検討会資料(2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 提言案)では、2030年度の輸送力不足が平均約7%〜最大約25%に達すると見込まれています。
「人が足りなくなったら、派遣やアルバイトを増やせばいい」という従来の力技は、もう通用するとは限りません。
実務でのアドバイス
【結論】
稟議に使う数値は、発行元と年をそのまま残し、提出前に更新されていないかを確かめます。
政府の見通しは、再検証によって更新されることがあります。
数字だけを社内資料に残すと、更新後も古い根拠が独り歩きします。
輸配送やモーダルシフトまで含めた物流全体の効率化については、輸配送を含む物流全体の効率化で扱っています。
出典:国土交通省・経済産業省・農林水産省「改正物流効率化法ポータルサイト」
出典:国土交通省「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」
自社のボトルネック工程の見つけ方
「どこから手を付けるべきか」で迷ったときは、感覚や当て推量で選んではいけません。
その期間にこなすべき仕事量に対して、いつもの人数と時間で処理できる能力が追いついていない工程から候補を絞り込みます。
同じ荷姿・同じルートを通る作業の範囲内では、その工程が全体の出荷締切をせき止めているボトルネックになっている可能性が高いからです。
実は、「どの工程から自動化すべきか決めきれない」と悩んでいるのは、決してあなたの倉庫だけではありません。
経済産業省の委託調査によると、中堅・中小の荷主企業195社のうち、実に47.7%が「自動化機器の導入を推進したい庫内工程は特になし」と回答しています(PwCコンサルティング作成・2024年度)。
どこがネックなのか見えていないからこそ、欲しい設備の名前から入るのではなく、現場の工程データから冷静に候補を絞り込んでいく必要があります。
出典:経済産業省の同調査報告書
これは、水道管の一番細くなっている部分が、蛇口から出る水の量を決めてしまうのと同じ理屈です。
ここからは、計算と現場確認を使って候補をあぶり出していきましょう。
この記事では、着手候補を絞り込むための一次診断として、通常の人数・時間で締切までに安定して処理し続けられる量を「継続処理能力」と定義します。
現場の条件を「同じ荷の流れ・1つの締切で終わる同じ比較窓・同じ単位」にきっちりそろえた上で、次の4ステップで数字を出してみてください。
- 必要処理量(その締切までに絶対に処理しなければならない荷の量)
- 継続処理能力(安定処理速度〈ケース/時間・通常チーム〉× 利用可能時間)
- その差(2 − 1)(マイナス=処理能力が不足している工程を候補として抽出)
- 滞留や待ちの増減で裏を取る
なお、この「4」のステップは独立した判定条件ではなく、計算で出たステップ3の結果が現場の実態と合っているかを確かめるための補助指標です。
ケース品とパレット品のように荷姿や動線が枝分かれしている倉庫なら、同一の荷姿・同一の経路ごとに分けて仮決めします。
工程ごとの作業時間と処理量の調べ方
正しい判定を行うための大前提は、現場のリアルな実態が「客観的な数字」として取れていることです。
先ほど挙げた庫内9工程それぞれについて、次の6つのデータが手元にあるかを確認しましょう。
- 入ってきた荷物の量(到着量)
- 期首・期末にその工程の手前に残っていた荷物の量(滞留・持ち越し)
- 締切対象の区分(今回の締切までに処理すべき荷と、翌日へ持ち越してよい荷)
- 安定処理速度(1時間あたりに通常チーム全体で処理できる量)
- 利用可能時間(通常のシフト時間から休憩などを引き、締切までに収まる実働時間)
- 前工程待ち・荷不足による手待ち時間と、そこに投入した人数
このうち「1〜3」が必要処理量を計算する材料になり、「4〜5」が継続処理能力を計算する材料になります。
「6」の手待ち時間は能力から勝手に差し引かず、現場の状況を読み解く別の補助記録として使います。
ここで一番注意したいのが「4. 安定処理速度」の測り方です。
いつもの通常人数で、荷物が途切れずスムーズに流れている時間帯を複数回計測します。
同じ荷姿・ルートで代表的な作業パターンに条件をそろえ、一時的な最高スピードではなく「無理なく出し続けられるチームの実力値」を採用してください。
複数回測った結果をまとめる際も、各回の速度を単純平均するのではなく、計測した区間の「総処理量」を「総経過時間」で割って1つの値を出します。
現場でありがちな小さなチョコ停や荷姿の切り替えを経過時間から除外したり、やたらと作業が調子良かった時間帯だけを抜き出したりすると、能力が過大に出てしまい、本当の不足が見えなくなってしまいます。
また、数える単位は出荷件数・出荷行数・パレット枚数・ケース数のいずれかに必ずそろえてください。
単位がバラバラのまま数値を横並びにしてはいけません。
必要な処理量と実際の処理能力の比べ方
計算を行う「比較窓(比較する時間枠)」は、前の時間帯から残っていた荷物をカウントした時点から、1つの出荷締切時刻までと設定します。
1日に午前便・午後便など複数の締切がある場合は、締切ごとに時間枠を区切って別々に計算しましょう。
工程ごとに処理できた絶対値だけを単純に横並びにして比べても、真のボトルネックは見抜けません。
工程によって数える単位が違いますし、その工程を通過する荷物の割合も異なるからです。
たとえば全出荷の一部しか通らないギフト包装や流通加工のような工程は、一見すると処理量が少なく見えても、倉庫全体の出荷をせき止めているとは限りません。
必要な処理量の出し方
必要処理量は、時間枠のスタート時点で手前に残っていた滞留(期首滞留)と、その期間中に入ってきた到着量を母集団にして、今回の締切までに終わらせなければならない荷物だけを重複なく1回ずつ数えて算出します。
「締切までに処理すべき量」を別の数量としてさらに足し算してしまうと、同じ荷物を二重にカウントすることになるので注意してください。
翌便に持ち越して構わない荷物は、今回の必要処理量からはきっちり除外します。
継続して処理できる量の出し方
継続処理能力は、安定処理速度(ケース/時間・通常チーム)に利用可能時間を掛け算して算出します。
ここで使う速度は「チーム全体の処理速度」ですので、計算式の中でさらに人数を掛け算してはいけません。
もし作業員1人あたりの速度で計測した場合は、まず通常人数を掛けて「チーム全体の速度」に換算してから、利用可能時間を掛けてください。
利用可能時間は、所定のシフト時間から休憩や朝礼、計画停止などを差し引いて算出します。
前工程から荷物が届かなくて手が止まっていた時間(手待ち時間)は、ここから差し引いてはいけません。
手待ち時間を引いてしまうと、「荷物が来なくて待たされていた工程」の本来の能力まで小さく見積もられてしまうからです。
計算の終点は、必要処理量と同じ締切時刻にきっちり合わせます。
また、「その日に実際に処理できた実績数」をそのまま処理能力として使うのも非常に危険です。
実績数は、入ってきた荷物の量や手前の滞留に左右されます。
処理すべき荷物が十分に供給されていなければ、能力の上限値は観測できないため、実績値は能力そのものではありません。
残業や他部署からの応援、臨時の増員分も能力の計算には含めません。
足りない量の出し方
工程ごとの余力や不足は、継続処理能力から必要処理量を引き算して求めます。
答えがプラスなら余力あり、ゼロならギリギリ、マイナスなら能力不足です。
この差がマイナスになった工程こそが、自動化を検討すべきボトルネック工程の候補となります。
不足が出る工程が複数見つかった場合は、不足量(必要処理量から継続処理能力を引いた値)が大きい順に並べて優先順位をつけます。
ただし、これが比較できるのは、同一荷姿・同一経路・同一の締切枠・同一の単位でそろえた範囲内に限られます。
滞留と待ちで裏を取る
マイナスの不足が出た工程について、本当にその手前に荷物が溢れているか(入荷バース、仮置きエリア、ピッキング棚の前など)、そして前後の作業に待ちが発生していないか(フォークリフトの順番待ち、検品待ちなど)を、時間枠の始めと終わりで現場を見比べて確認してみましょう。
もし計算上は大きく不足しているはずなのに手前に荷物が溜まっていなければ、さらに手前の工程が先に詰まっていて荷物が流れてきていない可能性があります。
逆に、計算上は余力があるはずなのに荷物が山積みになっているなら、トラックの到着が特定の時間に集中していたり、事前の見積もりがズレている疑いがあります。
その場合は、もう一度データの数え方に戻って確かめ直しましょう。
ボトルネック工程の絞り込みと確認
ここで導き出すのは、あくまで初期段階の「仮決め」です。
どうしても1つに絞りきれないときは、候補を2つ持ったまま次のステップへ進んでもまったく問題ありません。
絞り込みは荷姿や動線がそろった範囲ごとに行い、倉庫全体を無理やり1つのボトルネック工程に丸め込まないようにしましょう。
繁忙期のピーク出荷時にいつもパンクしてしまう工程や、毎日のように残業や応援要員が集中している工程、あるいは保管階と出荷階が別フロアにあって荷物の移動待ちが頻発している工程などは、仮決めを裏付ける強力な現場証拠になります。
ただし、これらの現場感覚だけでステップ1〜4のデータ計算を省略することはできません。
本当にそこがボトルネックなのかを確かめるために、その工程の人員や稼働時間を一時的に増やしてみて、手前の山積みが解消されて倉庫全体の出荷量が増えるかどうかをテストしてみるのも有効な手です。
ただし、複数の工程が同時に詰まっていると結果が読み取りにくくなる点には注意してください。
実務でのアドバイス
【結論】
投資先は、感覚的に遅い工程ではなく、通常の人数と稼働時間で処理できる量がこなすべき量に届いていない工程で選びます。
感覚で選ぶと、速くなった実感だけが残ります。
前の工程を速くしても、次の工程で処理できる量がこなすべき量に届かなければ、そこに荷が溜まるだけで、倉庫全体の出荷量は変わらないためです。
設備で解決する問題と運用で解決する問題
ボトルネックとなっている工程が特定できたからといって、すべてを高価な機械設備で解決しようとするのは早計です。
設備導入の検討に入る前に、次の3つの視点で運用の見直しができないかを必ず確かめておきましょう。
- その荷物の滞留は、棚の保管ロケーションの最適化やピッキング順路の見直し、作業シフトの配分変更といった現場の工夫で解消できないか
- トラックの入荷時間を分散させたり、出荷作業を前倒ししたり、ピーク日の応援計画を組むことで、波のある荷量そのものを平準化できないか
- こうした現場の工夫をやりきった上で、どうしても吸収しきれずに残る「不足する処理量と時間」はどれくらいあるか
現場の運用改善でカバーできる限界を見極め、それでも残ってしまうギャップを明確にしてから設備の検討に移れば、社内の稟議でも「現場の運用改善だけではどうしても追いつかない」という説得力のある説明ができます。
工程別に使える自動化の設備
ひとくちに「倉庫の自動化」といっても、工程ごとに置き換わる作業の内容も、世の中の自動化の進み具合もまったく異なります。
これらを一緒くたにして検討すると、判断を見誤ってしまいます。
ここからは、庫内9工程を「保管」「搬送」「仕分け〜出荷」「情報」の4つの領域に分けて見ていきましょう。
前の章で仮決めしたボトルネック工程を念頭に置きながら、対応する設備を確認してみてください。
| 工程 | 主な自動化の手段 | 中堅・中小のレベル3導入率 |
|---|---|---|
| 積み下ろし | 荷役機器・デパレタイザ系 | ― |
| 入荷検品 | 検品システム・自動読取 | 0.0% |
| 搬送 | コンベヤ・AGV・AMR・垂直搬送機 | 3.1% |
| 棚入れ・保管・棚出し | 自動倉庫・移動棚 | 2.4% |
| ピッキング | GTP・DPS・ピッキング台車 | 2.5% |
| 仕分け | 仕分機・DAS | ― |
| 梱包 | 自動梱包機 | 4.3% |
| 出荷検品 | 検品システム | ― |
| 積み込み | パレタイザ・フォークリフト系 | 0.0% |
| (情報・計画) | WMS・在庫管理システム | ― |
導入率は経済産業省の委託調査(PwCコンサルティング作成・2024年度)による。
中堅・中小企業 n=145。「―」は確認できていない項目です。
この表にある「レベル3」とは、経産省の調査が独自に定めた3段階の区分で、自動倉庫、ロボットアームによるピッキング、AMR、WMSなどの高度な仕組みを1つ以上導入している状態を指します。
調査結果を見ると、中堅・中小の荷主企業では高度な自動化はまだほとんど進んでおらず、搬送や梱包が比較的先行している状況がわかります。
「他社に比べてウチは遅れているのでは」と焦る必要はまったくありません。
ただし、この数値はあくまで「レベル3」に該当する高度設備の導入状況であり、簡易的なマテハン機器を含めた倉庫自動化全体の導入率を示すものではありません。
工程ごとにどのような高度化が進んでいるのかを把握する参考材料としてご覧ください。
出典:経済産業省の同調査報告書
保管の自動化に使う自動倉庫
自動倉庫(AS/RS)は、棚入れ・保管・棚出しといった保管まわりの作業を集約して自動化する代表的な設備です。最近の機種やシステム構成によっては、荷物の搬入・搬送・搬出だけでなく、自動仕分けやピッキング機能まで一体化されたものも登場しています。
ただし、自動倉庫を入れさえすれば倉庫全体が自動化されるわけではありません。
検討している設備が仕様上どこまでの工程をカバーしているのかを必ず確認しておきましょう。
実務でのアドバイス
【結論】
設備名ではなく、仕様上どの工程まで含むかで候補に入れます。
JILSの統計では、自動倉庫と垂直搬送機は別の機器分類として集計されています。
対象の工程が違えば、必要な機器も変わります。
すでに日々の入出荷が動いている既存の倉庫へ後から設置する場合は、設置スペースの確保はもちろん、工事の施工範囲や、数ヶ月に及ぶ工事期間中に荷物をどこへ一時保管するのかといった現場の運用課題を、早い段階で機器メーカーへ確認しておく必要があります。
出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「2024年度 物流システム機器生産出荷統計」
搬送の自動化に使われる設備
庫内の搬送を自動化する設備には、決まったルートで大量の荷物を流し続けるコンベヤや、床面を自律走行して荷物を運ぶAGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)などがあります。
AGVとAMRでは走行の仕組みやレイアウト変更への柔軟性が大きく異なるため、同じ搬送ロボットとしてひとくくりにはできません。
また、複数階にまたがるフロア間の上下搬送を担う設備としては、垂直搬送機が広く使われています。
JILSの統計では、垂直搬送機を「複数の搬入出装置を持ち、連続で搬送物を垂直搬送する装置」と定義し、「ただし、エレベータ、小荷物専用昇降機は含まれない」としています。
取り扱う荷物に応じてパレット用とケース・ピース用の2つに分類されています。
なお、AGVやAMRをスムーズに走行させるためには床面の平滑さなどの建物条件が不可欠となります。
これについては次の章で詳しく確認します。
仕分けから出荷までの自動化
仕分け、ピッキング、梱包、出荷検品、積み込みといった出荷まわりの工程を検討する際は、「作業そのものを機械に置き換えるアプローチ」と「人の判断や移動の手間を減らすアプローチ」を切り分けて考えると、選択肢がすっきり整理できます。
たとえば、ソーター(自動仕分機)やパレタイザ/デパレタイザは作業そのものを機械が代替する設備ですが、GTP(作業者の手元まで棚が来る仕組み)やDPS(デジタルピッキングシステム)、DAS(デジタルアソートシステム)は、人の移動距離を減らし、迷わず作業できるように支援する仕組みです。
どちらのやり方が最も費用対効果が高いかは、取り扱う商品の荷姿(ケース、オリコン、バラなど)や出荷件数の構成比によって大きく変わります。
まずは自社の出荷データから、荷姿ごとの割合を正確に数え直してみましょう。
在庫管理システムの自動化
WMS(倉庫管理システム)は、入荷から保管、出荷に至るまでのリアルタイムな在庫状況や作業の進捗を正確にコントロールするためのシステムです。
各種マテハン設備とシステム連携して自動制御を行う構成もありますが、すべての自動化設備にWMSが絶対に必須というわけではありません。
今回の一次診断を進める上で本当に重要になるのは、高機能なWMSが入っているかどうかよりも、日々の到着量、工程ごとの滞留、安定処理速度といった基礎データが現場で取れているかどうかです。
もし現場のデータがシステム化されていない場合は、焦って高額なシステムを導入しようとせず、まずは主要な工程の実績を一定期間手作業で記録する、その記録を日々のルーティンとして定着させる、その上でシステム化が必要かどうかを判断する、というステップで着実に進めていくのが確実です。
設備を選ぶ前に確認する建物の条件
カタログに載っている処理能力やスペックを見る前に、絶対に現場で確認してほしいのが「通路幅」「床面の状態」、そして倉庫の「賃借契約の内容」です。
建物の物理的な条件によって、そもそも導入できる設備の方式が制限されてしまうからです。
搬送機が走れる通路幅と床面
経済産業省の委託調査でも、搬送の自動化を進める大前提として「自動搬送機が走行可能な十分な広さの通路幅があり、また段差のない床面であることが前提である」と明記されています(PwCコンサルティング作成・2024年度)。
自動化を阻む具体的な要因としても、「床に高低差があるため自動搬送機が移動できない」という現場のリアルな声が挙げられています。
「図面上では通れるはずだから大丈夫」と油断してはいけません。
実際にメジャーを持って現場を歩き、通路の実測はもちろん、コンクリートの目地(継ぎ目)やスロープの傾斜、排水溝のフタなど、搬送機の走行トラブルになりそうな段差がないかを必ず実地で確認してください。
出典:経済産業省の同調査報告書
建物の条件を確認する順番
実務でのアドバイス
【結論】
通路幅と床面を実測し、賃借契約は貸主・管理会社へ確認してから、設備候補を絞ります。
搬送設備の図面作成でも、最初に確認するのは床面の条件と通路の寸法です。
前節の走行の前提も阻害要因も建物側の条件であり、機器の性能だけでは埋まりません。
| 確認項目 | 確認の方法 | 影響する範囲 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 通路幅 | 実測(保管棚の増設予定も含めて) | 自動搬送機が走行できるか | 経産省委託調査(走行の前提) |
| 床面の段差・高低差 | 通路の継ぎ目・スロープの有無を実地で確認 | 自動搬送機が走行できるか | 同(走行の前提・阻害要因) |
| 賃借契約の原状回復条項 | 賃貸借契約書の確認と、貸主・管理会社への事前確認 | 固定工事を伴う方式を選べるか | 同(阻害要因) |
表に載せているのは「何を・どこで確認するか」という手順です。
基準値や法令上の要件までは踏み込んでいません。
なお、床の耐荷重や有効天井高、梁下のクリアランス寸法などについては、一律の数値基準があるわけではありません。
設備候補を絞り込んでいく段階で、メーカーが提示する設置条件仕様書をもとに、施工会社や設計会社へ確認を取りましょう。
借りている倉庫で自動化する場合
賃貸の営業倉庫で自動化を進める際、避けて通れないのが「原状回復(退去時の復旧)」の壁です。
経済産業省の委託調査でも、全工程に共通する自動化の阻害要因として「賃借施設のため現状復帰が困難」という点がはっきりと挙げられています。
アンカーボルトで床にガチガチに固定するような大がかりな設備工事は、契約内容やオーナー(貸主)の意向によっては施工が許可されないことがあります。
まずは手元の賃貸借契約書を引っ張り出して原状回復条項を確認し、貸主や管理会社へ「どの程度の工事なら認められるのか」を事前に相談しましょう。
工事区分や退去時の負担範囲は物件ごとにまったく異なるため、一般論で判断せず自社の契約書をベースに詰めていくことが不可欠です。
もちろん、賃貸だからといって自動化を諦める必要はありません。
床を傷つけずに据え置きできる自立式のラックや、簡易的に撤去・移設が可能な設備構成が選べるかどうかを、ビルの管理会社と機器メーカーの双方を交えて相談してみましょう。
複数階の倉庫で確認する上下階の搬送
経済産業省の委託調査で触れられているのは、ワンフロアにおける搬送機の走行に必要な通路幅や平坦な床面の話です。
建物が2階建て以上の多層階倉庫であるなら、フロア間をまたぐ上下の荷物移動も絶対に外せない確認項目になります。
この視点は、現場の実態に合わせて当社で補足したものです。
平屋建てで上下移動が一切発生しない倉庫であれば、この項目は読み飛ばして構いません。
もし複数階の倉庫を運用しているなら、次の4つのポイントを必ずチェックしてください。
- 保管エリアと出荷バースが別の階に分かれているか
- 現在、上下階の間をどのような手段で運んでいるか(人手で運搬、台車ごとエレベーターに乗せる、既設のリフトを使うなど)
- 1日あたりの昇降往復回数と荷物の量はどれくらいか。特に出荷ピーク時にリフトの前で長い順番待ちが発生していないか
- 運んでいる荷姿(パレット、段ボールケース、オリコン、カゴ車、バラ積み)と、1回あたりの積載重量
フロア間の搬送設備は、運ぶ荷姿、積載重量、建物の階高、そして1日に動かす稼働頻度によって、選ぶべき最適な方式がまったく変わってきます。
「垂直搬送機」と一口に言ってもその構造やスピードは多種多様であり、現場によって設置条件も大きく異なります。
私たちが製造している垂直搬送機「タントレー」をご検討いただく場合も、まさにこれらの項目を一つひとつ現地で確認した上で、最適な仕様を設計していきます。
上下階の設備を導入すべきかどうかは、思い込みで決めずに次の順序で丁寧に検証してみてください。
- 人手による昇降作業の処理能力が、上下搬送に求められる必要処理量に追いついているか
- 人が台車を押してエレベーターを往復する場合と、専用の搬送設備を導入した場合の所要時間・投入人時を、実際にストップウォッチで測って比較する
- 荷姿や荷量、往復頻度に最もマッチする搬送手段を比較検討する(条件によっては他の昇降設備のほうが適している場合もあります)
垂直搬送機の詳しい構造や仕組みについては、垂直搬送機の仕組みと特徴で詳しく解説しています。
洗い出した建物の条件は、設備候補を絞り込むための大切な判断材料になります。
条件に制約があるからといって即座に諦める必要はなく、「事前に確認すべき項目が明確になった」と前向きに捉えてください。
搬送機器ごとの詳しい特徴や選び分けについては、搬送機の種類別の特徴と選び方にまとめています。
どこから始めるかと進め方
いざ自動化を進めるときは、焦って倉庫全体を一気に変えようとしてはいけません。
まずは「1つの工程」「特定の1エリア」に対象を絞り込み、効果を測るための明確な数値指標と現場の責任者を決めてから、小さくスタートして徐々に広げていくのが定着への一番の近道です。
費用と効果の比べ方
費用対効果を試算する際は、世の中の一般的な相場表を鵜呑みにするのではなく、まず自社の現場の数字を積み上げて比較しましょう。
基本は次の4つのステップで組み立てます。
- 対象とする工程の現在の「投入工数(人時)」と「処理量(出荷件数・出荷行数)」を正確に測る
- 月末やセール時など、最も現場が忙しい「繁忙期のピーク日」のデータも同様に計測する
- 設備導入によって「削減できる人件費」と、「ピーク時に出荷が遅延することによる金銭的・信用的損失」を分けて算出する
- 建物の制約条件をクリアするためにかかる追加工事費用(電源工事、床面補修など)を漏れなく洗い出す
投資回収期間の目安は会社ごとの投資基準によって異なりますので、自社の設備投資稟議で求められるハードル(回収年数の基準や指標)をあらかじめ財務部門に確認しておきましょう。
なお、複数階の上下搬送設備の導入を検討する場合は、昇降方式や建屋条件によって費用の幅が変わってきます。
予算感のイメージを掴むには、垂直搬送機の価格の考え方を参考にしてみてください。
範囲を絞って段階的に導入する
最初の導入範囲は、「1つの工程」「1つのエリア(保管ゾーンのみ/出荷ゾーンのみ)」「1つの荷姿」のいずれかに絞り込むのが現実的です。
「まずは出荷ゾーンのケース品だけ」「特定の大口荷主の出荷ラインだけ」といった単位でスモールスタートを切りましょう。
導入のタイミングは極力繁忙期を避け、システムの切り替え手順や、既存ラインを停止させている間の代替動線をどう確保するかを事前に綿密に決めておくことが重要です。
もし今期の設備投資枠が決まっていない場合は、まず現状の測定データを揃えて社内協議に臨むという順序を踏むと話がスムーズに進みます。
導入前後で測る数字
設備を入れて本当に効果があったかどうかは、導入前に計測しておいたベースライン(基準値)と比較して判断します。
倉庫の現場で追いかけるべき主要な数字は、次の5点です。
- 出荷1件(または1行)あたりにかかった投入工数(人時)
- ピーク日における最終出荷完了時刻
- 庫内滞留の待ち時間(工程と工程の間で荷物が滞留していた時間)
- 配送遅延件数および誤出荷の発生率
- 複数階倉庫の場合、階をまたぐ上下搬送の往復回数と待ち時間
稟議1枚に落とすチェック項目
社内を動かすために必要なのは、経営陣や決裁者が1枚でパッと理解できる分かりやすい稟議書です。
次の7項目が整理されていれば、説得力のある骨子が出来上がります。
| # | 稟議に残す項目 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 1 | 対象工程 | 対象にした荷姿・経路・比較窓・単位/必要処理量/継続処理能力/不足量/裏取りに使った滞留・待ちの状況 |
| 2 | 運用改善の検討記録 | 設備ではなく運用で解けないかを検討した結果 |
| 3 | 建物の条件の確認結果 | 通路幅・床面・賃借契約の確認結果(複数階の場合は上下階の搬送も) |
| 4 | 測る指標とベースライン | 導入前の実測値と、導入後に見る指標 |
| 5 | 段階導入の範囲 | 最初の範囲と、次に広げる条件 |
| 6 | 運用と保守の担当 | 誰が責任を持って動かすか(下記の5点) |
| 7 | 効果が出なかった場合の判断 | 範囲を戻す・別工程へ移す、の判断条件 |
とくに「項目6」の運用体制については、倉庫の現場に合わせた次の5つの責任分担を明確にしておきましょう。
- 出荷締切に間に合わなくなりそうな際のエスカレーション判断と権限(誰がラインを止めるか、誰が他工程に応援を要請するか、夜間・休日の緊急連絡先)
- WMSへの実績データの入力・消込と確認の担当者
- 新しいサイズや重量の荷物が発生した際、その荷物を設備に流してよいかを判断する責任者
- 保管ゾーンと出荷ゾーンの責任分界点(設備と設備のつなぎ目となる区間の管理責任者)
- ピーク日における応援要員の投入基準(誰が・どの滞留量を超えたら応援を呼ぶか)
倉庫の自動化のメリットと課題
倉庫の自動化に成功すれば、省人化や出荷処理スピードの劇的な向上が期待できます。
ただし、その効果の大きさは「狙いを定めた工程が本当にボトルネックだったか」と「現場の条件に合致しているか」に大きく左右されます。
自動化で得られるもの
自動化によって得られる主なメリットは、現場の省人化、繁忙期のピーク処理能力の底上げ、日々の出荷完了時刻の安定化、作業ミスや品質ばらつきの低減、そして工程ごとのリアルタイムな進捗データの可視化です。
ただし、これらの効果が目に見えて現れるのは、対象にした工程が真のボトルネックだった場合に限られます。
機械を入れたからといって入ってくる荷物の総量が減るわけではないため、もし前後の工程が先にパンクしていれば、最終的な出荷完了時刻は1分も早くなりません。
見込みを外しやすい点
自動化の計画段階で陥りがちな「想定外の落とし穴」には、次の4つのパターンがあります。
- 部分最適の罠
特定の工程だけを速くした結果、次工程に荷物が殺到して新たな渋滞を生んでしまうケースです。改善後は、必ず次の工程の処理余力を同じ時間枠で再測定しましょう(→「ボトルネック工程の絞り込みと確認」を参照)。 - 実績と能力の取り違え
「過去にこれだけ捌けた実績があるから」と、実績値をそのまま機械やチームの実力値として見積もってしまうミスです(→「継続して処理できる量の出し方」を参照)。 - 異メーカー機器の組み合わせトラブル
複数のベンダーから異なる機器を導入して連携させる場合、荷物の受け渡し時の搬送速度やセンサー信号のやり取り、トラブル時の責任分界点を、発注前に各メーカーと書面で詰めておく必要があります。 - 建物条件の確認漏れ
設備を選んだあとに「実は床の段差で走れなかった」「賃貸契約で床のアンカー打ちがNGだった」と発覚するパターンです。通路幅・床面・契約内容は、機械を絞り込む前に必ず確認しましょう(→第4章を参照)。
倉庫の自動化についてよくある質問
自動化の進め方について、現場の担当者様から特によくいただく4つの疑問にお答えします。
在庫管理システムと設備のどちらを先に検討するか
「WMSの導入とマテハン設備の導入、どちらを先にするべきですか?」という質問をよくいただきますが、これには一概にどちらが先とは言えません。
もし現在の現場で、日々の到着量や工程ごとの滞留、作業速度といったデータが全く取れていないのであれば、まずはデータの見える化(情報整備)が先決です。
現状の数字が把握できなければ、どの工程がボトルネックなのか判定できず、機械を入れたあとの効果も検証できないからです。
検討開始から稼働までの期間
検討をスタートしてから実際に設備が稼働するまでの期間は、導入する機器の種類や付帯する建築工事の規模によって大きく異なります。
自社のスケジュールを見積もる際は、「設備の製造リードタイム」「床工事や電源工事の施工期間」「繁忙期の出荷を避けた工事日程の設定」「既存の作業を止めずに切り替える移行期間」の4点を考慮して計画を立てましょう。
繁忙期のピークだけを対象にできるか
「年間で一番忙しい年末のピーク時だけを何とかしたい」というご相談も非常に多いです。
ピーク時をターゲットにするかどうかは、年間の設備稼働率と、閑散期も含めて発生し続ける維持コストを天秤にかけて慎重に判断する必要があります。
年間ピークの出荷量を基準に大規模な設備を構えるのか、それともピーク時は応援体制や時間帯の分散で乗り切り、年間を通じて確実に効果が出る工程を対象にするのか、両方のパターンを比較して検討してみてください。
荷姿がそろっていない倉庫での考え方
取り扱う荷物がパレット、段ボールケース、オリコン、カゴ車、バラ物と多岐にわたる場合、機械側に求められるサイズや重量の許容範囲が広がり、設備が複雑で高額になりがちです。
まずは「定型サイズの段ボールケースだけ」といったように、荷姿がそろっている製品群から優先して対象にすると、設備仕様をシンプルに絞り込みやすくなります。
まずは一度、自社で扱っている荷姿の内訳と比率を数え直してみましょう。
まとめと次にやること
倉庫の自動化は、世の中のカタログから「話題のロボットを選ぶ作業」ではありません。
自社の現場を「庫内9工程」という共通の枠組みで丁寧に分解し、真のボトルネック工程を数字で仮決めした上で、建物の物理的な制約をクリアしながら、スモールステップで進めていく地道な取り組みです。
この記事を読み終えたら、まずは現場で次の3点から確認してみてください。
- 同じ荷姿・同じ締切時間枠・同じ単位にそろえて、工程ごとの「必要処理量」と「継続処理能力」を計算し、引き算でマイナスになる工程を突き止める
- その詰まりが、保管ロケーションの変更やシフトの調整といった「運用の見直し」だけで解決できないかを先に確かめる
- 検討候補のエリアについて、通路幅・床面の段差・賃貸契約の原状回復条項を現場で確認する
もし2階建て以上の倉庫をお使いで、上下階の荷物移動が全体のボトルネックになっている場合は、垂直搬送機「タントレー」を設計・製造している当社までお気軽にご相談ください。
自社の条件でどのような設備が成り立つか判断がつかない場合も、現地調査・見積り・図面作成を無料で承っております(全国対応・一部離島を除く)。